今回は、焼き鳥居酒屋「鳥貴族」のブランド1本で勝負している鳥貴族について調べてみたいと思います。
鳥貴族の事業内容概要
1985年に個人店として創業。現在は約500店舗。社長いわく、均一、リーズナブル価格のマクドナルドを尊敬し、焼き鳥屋のマクドナルドになりたいらしい。また、創業時の社名をイターナルサービスとしているが、これは永遠の会社を作りたいという意思の表れであり、この意思を社長は持ち続けています。
焼き鳥居酒屋鳥貴族単一ブランドで、関西圏・関東圏・東海圏の3商圏に焼鳥店の店舗展開をしている。1000店舗を、この3証券だけで達成しようとしている。事業区分は「飲食事業」の単一セグメント。280円(税抜)という均一価格でありながら、「味」「品質」「サービス」の向上を図ることでお客様に感動して頂けるような店舗展開を行い、多くのお客様にご利用して頂くことで「焼鳥=鳥貴族」と考えて頂けるような「永遠の会社」を目指している。ちなみに、安売りをしたいわけではなく、感動を売りたいという意思があるようで、単に安けりゃいいでしょ的な店とは一線を画す。
中期経営計画によると、国内2000店舗を目指し、その後は海外展開も見込んでいます。
鳥貴族の事業内容詳細
鶏肉、焼き鳥について
鶏肉は、新鮮国産チルド鶏肉を使用。鶏肉は劣化が早く串打ちした瞬間から劣化が始まる。よって、各店舗で串打ち。主に、17時の開業時間前にパートのおばちゃんがやっている。セントラルキッチンは使用しない。これはこだわり。
鶏肉仕入れコストは、300店舗展開になった段階で創業時の1/3。バルクオーダーで原価を下げれる。焼き鳥一本の業態でいくことにしているが、これは原価を下げ美味しいもの提供できるでしょう、というのもある。
フードメニューも、65に絞り込み、無駄には増やさない(一般的には80-120)。これも、原価率をさげるためである。
また、鮮度を保つため地産地消にも力を入れる。消費地の近くで仕入れることで、輸送コストを削ることができる。よって、新エリア開拓時は、鶏肉卸業者探しもセットである。ちなみに、信頼がおけるので、ビールメーカーなどの紹介が多いとのこと。海外展開の際は、このあたりをどうするかがポイントであるとも言及。
一方、全店変わらない味を維持するため、タレは、自社工場(大阪)。
また、炭火焼など必要ないと思っていることに関しては割り切って捨てている。炭火焼にすることで、効率化ができず大切なお客様との時間も取れず総合的に満足いく結果にならないからという観点。そもそも、そんなに炭火焼との違いがあるか?という観点から考えている。ポイントは遠赤外線で焼くこととのことで、これができていれば機械で焼いても炭火焼とあまり変わりはない。であれば、炭火焼と機械のメリットデメリットを天秤にかけて炭火焼を捨てるという判断が鳥貴族の見解。
オペレーション
効率化のための機械購入は積極的に進めており、これまでワンプッシュで注げるビールサーバーetc.に投資。成果があがれば、全店舗に展開していく。また、オーダーエントリーシステムという、例えば「今貴族焼き何個注文入ってる?」などがすぐわかるようになってるシステムなども実験中(書籍「鳥貴族「280円均一」の経営哲学」時)。これにより、まとめて焼けるので待ち時間なども減る。マクドナルドを尊敬しているからか、厨房はファーストフード店を目指すらしい。
また、マクドナルドを意識し、1000店舗体制でも効率的に運営できるオペレーションを1000店舗達成前から意識している。
上記からわかるように、マニュアル作りには非常に積極的である。
本社ビルなど
また、本社など店舗以外の本業と関係ないところにはコストをかけないというのも書籍で明確に言及しており、この辺も好感が持てる。本社立派とか、居酒屋には関係ないですし。
鳥貴族の内装は木目で全店舗統一し、女性客でも入りやすく。これは、書籍にも書いてあったが、従来の個人焼き鳥点とは違い明確に若者・女性をターゲットにいれており、実際の店舗も見回すと若い女性も多く、この戦略は成功していると思われる。
出店先
また、出す店舗は首都圏では家賃が高いので路面店には出さない。路面店でなくても人が入ってくるようなブランドを目指しており、現在のところ「トリキいこー」という会話がなされるくらいでわざわざトリキに行こうとする客が多いのでこちらは成功していると思われる。実際行くと、ビルの6Fとかなのに満席で入れないこともしばしばである。
また、既存居酒屋は、出店先を選ぶ際にしか参考にしておらず、むしろライバル視しているのはコンビニエンスストアである。居酒屋業界の生活必需品を目指す。
また、本社事務所および店舗はほとんどが賃貸である。
給与と待遇
ブラック企業で炎上したワタミのことを意識してか意識せずとか、目指せホワイト企業も目指している。飲食業態といえども、効率化経営で十分な利益がでるようであれば、従業員の保護を熱くしてホワイト企業化することも十分可能だと思われるのでこちらはいい心構だと思う。儲かっても従業員からは搾取し続けようみたいなのが全く見えないのは非常に好感が持てる。
給与は、基本的に一般社員→店長→店長をまとめるマネージャーと、役職が上がれば上がっていく体型だが、賞与に関しては業界平均より高い水準に設定し、また個人や店舗の業績を加味した仕組みにしているとのこと。また、人としての基本ができていない人はマネージャーにしないとのこと。
店員は、特に首都圏においては日本人→外国人の比率が増えたように思われる。また、昔は1人1人に対して積極的に話をしていくようなカジュアルな風潮があったが、現在はちょっと店内が忙しすぎて個別客1人1人と話をする時間は取れてないように思われる。しかしながら、対人接客に関しても力は入れているようで、別に客と話をしてはいけないとかはなさそうで、むしろ大切にしようという心構えがある。
人材
200店舗を超えたあたりから、生え抜きの人材だけでは限界を感じ、そのフィールドで戦った大手飲食チェーンからキーマンを中途採用。
また、鳥貴族の目標は「永遠の企業」のため次の社長は世襲しないとのこと。理由は2つで、1つは会社の公器であり私物化すべきものではないから。もう一つは、永続させるためには実力と意欲のあるものが受け継いでいくべきだから。
成長スピード
2012年の書籍執筆時には、2016年で1000店舗を目指すと書いてあったが、それは達成できておらずおよそ半分の約500店舗に落ち着いている。
また、2017年以降は海外出店も視野に(書籍情報)。ただ、早すぎることはあっても遅すぎることはないという考え。
中期経営計画から見る今後の展望
2015年7月期 – 2017年7月期の中期経営計画をまとめてみる。
(中期経営目標)
・ 3商圏、500店舗、売上高250億
・ 既存店売上 年間101%上昇
・ 経常利益率 5%以上維持
このための重要施策が下記の3つ。
・ 新規出店の強化
・ 国産国消への挑戦
・ ホワイト企業への取り組み
(新規出店の強化)
2021年に1000店舗体制へ。調査によると、3商圏で1027店出店可能なので、そこをせめる。関東圏、東海圏の既存店売上好調を背景に2商圏の直営店出店を加速。
カムトレードチェーンの利益構造はどうなっているのか?
ロイヤリティー収入を受け取る形になっている。
既存のフランチャイズとはシステムが異なり、
1.新規の加盟を受け付けておらず、
閉鎖されたチェーンシステムである
2.フィーが世間一般のFCフィーと比較して非常に低額である
ということらしい。
参考:http://ameblo.jp/toriki-ookura/entry-11746267044.html
12年以上新しい加盟社はいれず、現在14社で210店舗を経営。最近2社増えたが、これは社員ののれんわけ、とのこと。直営、フランチャイズの差がなく高いレベルで店舗運営が可能に。
参考:https://www.ora.or.jp/wp-content/uploads/2017/01/report_161202.pdf
売上など、各指標推移
時価総額:約280億円
株価:2,440円
売上:約245億円 (2016年7月)
営業利益:約16億円
経常利益:約15億円
純利益:約10億円
予一株配当金:8.00円
予配当利回り:0.32%
↑指標一覧。
↑過去5年の貸借対照表。
↑過去5年の損益計算書。
↑過去5年のキャッシュフロー。投資を進めていますが、新規店舗出店が大きいのでしょう。
↑営業利益率推移。
↑経常利益率推移。
↑EPSの推移。
考察
個人的感想
指標面で割高さがなければ、個人的には絶対に買いだと思う銘柄です。売上、EPSなどなど、綺麗な右肩あがりで非常に買いたい。あと、私は関西に住んでいた学生の頃から、ほぼ10年くらい鳥貴族のロイヤルカスタマーで、今もよく通っているのですが、店自体はとてもよいと思いますね。居酒屋業態で「とりきいこー」みたいな名指しで店を指定されることって、なかなかないと思いますし、もうブランドとして良い意味で若者には定着していると思います。
若い女性ターゲットもほぼ成功しており、デートとかでなく仲良しグループでのむならまず選択肢に上がる居酒屋。今の若者は将来のおっさんおばさんなので、長い目でみても良いでしょう。
あとは、バルクでの仕入れにより、鶏の仕入れ価格はかなり下がっているようですから、どっかのタイミングで昼向けに鶏丼ビジネスでもやりだすと、松屋、吉野家、すき家などと同じような収益も狙えそうで面白そう。今メニューにある、焼き鳥丼をそのまま出しても売れると思います。自分なら、行きたいですね。
レオスキャピタルワークスの大量保有
レオスキャピタルワークスが、大量保有しているので、その動きに株価もつられそうな点には注意したいですね。最新ですと、平成29年4月4日に提出されており、保有比率が7.88%→9.10%に変更になってます。また、買い付けは、2200円代後半から2300円代前半で行っているようで、このへんで底値が支えられる可能性が高そうであるとも考えられます。
・http://www.kabupro.jp/edp/20170404/S100A10N.pdf
店舗数推移
店舗数の推移をエリア別にだしてみました。
↑直営店とカムトレード店の比較。
↑エリア別出店数推移。
直営店の関東圏に注力していることがみてとれますね。
あと、単一居酒屋では、店舗数1000が1つの基準になると言われてます。
ロケスマというサービスで、他の業態の店舗数などを調べてみると、この1000店舗というのはなかなか大変です。
カフェでいうドトール、ファミレスでいうサイゼリア、牛丼屋でいう松屋と同程度の店舗数にしようとしてるってことですよ。これ、感覚でいうと主要駅行ったらだいたい鳥貴族あるし、街歩けば鳥貴族見えるとかと同じ感じですよ。割と、壮大な目標ではあると思いますが、まだ三大商圏メインでしか出店しておりませんし、可能性は秘めてると思います。
買い付け価格を検討してみる
↑売上総利益推移。
材料仕入れて、店舗で居酒屋するだけだからか、売上総利益って、ほぼパーセンテージ変わってないんですよね。つまり、ビジネスとしてはあとは「既存店売上をいかに維持するか」「新規店舗をいかに出すか」「いかに効率的なオペレーションで利益率をあげるか」に集約されると思うんですよね。
↑そして、営業利益率推移はこんな感じ。長期的には10%を目指しているようです。これは、タッチパネル導入店をどんどん増やすことなどで近づけていくことができるでしょう。
ここまでしてやれば、過去の1店舗あたり売上を算出→出店スピードから未来の店舗数を予想→未来の売上高を計算。
そして、売上に対して、売上高税引後利益率がだいたい4%程度なので、それをかけてあげて、未来の純利益を予測。その後、PERを22倍程度、発行済株式数に変化がないとすると、PER*EPSで予想株価を算出できますね。
一応、自分の中で買いたい値段はあるので、そこまでじっくり待つしかないって感じですかねー。本当の買いポイントは、IPOしてちょっとしてからだったんだろうなー。IPOで買えなかったからって、買わなかったけど、ちゃんと中身を調べるべきだったのでしょうね。
将来の妄想
個人的妄想としては、
・国内1000店舗までは出店、既存店売上ともに順調に進む(スピードは予定より遅れそうな気はする)。
・国内2000店舗も達成できる(各地域のメイン都市に絞って出店すればいけそう)。
・海外出店(これは未知数)
・昼向けに鶏丼屋をスタート(これで、爆上げ)
という妄想をしております。
↑本文中で言及している”書籍”はこちらのことです。
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